ダイコン

だいこんの花
名称 ダイコン
属科 あぶらな科
学名 Raphanus sativus L.var. hortensis Backer
生薬名 莱フク子(種子)
食性 辛・甘、平

「大根は能く穀物を消化し、痰を除き、吐血・鼻血を止め、
麺類の食べ過ぎ、魚肉の毒、酒毒、豆腐の毒を消す。」

と『本朝食鑑』に書かれているダイコンは、日常の食卓には一番なじみのある野菜です。於保禰・於朋禰(おほね)という名で『古事記』『日本書記』にお目見えし、平安時代の『延喜式』には、大根(おほね)と記され、栽培法や利用法が収載されています。ダイコンという呼び名が付いたのは室町以降といわれます。貝原益軒の『養生訓』には、大根の薬性が謳われていて、薬用として大切に扱われていた野菜でもありました。


産地と種類

 地中海沿岸原産といわれ、エジプトのピラミッドの石を積み上げる作業をした大切な労働者たちに、王様は大根・玉ねぎ・にんにくを与えたことが記録に残っているそうです。古く中国を経て到来した大根は江戸時代には日本全国で次々に風土に合った品種改良が行われ、地域特産品の練馬・亀戸・三浦・宮重(青首)・聖護院(丸型緻密な肉質)・鞍馬口・守口(世界最長1.2〜1.5m)・美濃早生・桜島大根(世界最大 10〜15kg)等、形や色、大きさや長さ、早生、耐暑性、耐病性や味覚の違う大根が生まれました。交配が容易で出荷時期には多数の品種で賑わいます。保存食として沢庵漬、守口漬、奈良漬など地方色豊かな漬物が工夫されました。他に葉大根、はつか大根、かいわれ大根なども喜ばれます。種まきの時期にもよりますが、4〜5月には、白色から淡紅紫色の4弁花が、春の心地よい風に揺れて咲きます。


成分の特徴

 あぶらな科のダイコン、カラシナ、ワサビ、ワサビダイコン等の辛味成分は、配糖体シニグリンとして存在して、調理の際にいろいろな形に切ることで、組織が破壊されるとシニグリンは分解して芥子油であるイソチオシアナート類が遊離します。揮発性で水溶液中では不安定で、次第に消失します。
辛味は生育初期は、成熟期の5倍の辛さがあり、根の先端部ほど辛いことは、主婦の皆様は経験済みですね。ダイコンの成分は何といっても消化酵素が豊富に含まれていることが特徴です。消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ:でんぷん→麦芽糖)、グリコシダーゼ、オキシダーゼ、パーオキシダーゼ、アミダーゼ、カタラーゼ等、酵素類を豊富に含み消化の助けになる貴重な野菜です。根全体では、水分94%、硝酸性窒素3%、蛋白質 1%、水溶性食物繊維のペクチン等が0.7%、糖質3%、少量の有機酸が含まれます。葉にはビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンC、葉酸、カロテンが豊富ですから捨てるのはもったいないですね。乾燥した切干大根や干し葉はカルシウム・カリウム等も多いことが食品成分表で確認できます。また、食物繊維の良い供給源です。


調理

 温かい大根を食べると中風にならずに長寿のご利益があるとされ、京都の12月は、了徳寺の周辺では報恩講の行事である大根焚きの湯気が立ち昇り、参詣の人々に振る舞われて冬の到来を告げます。
温食するか、生大根に酢を使う生酢やサラダなどは、酵素作用が止まり、辛味も特有の臭いも苦味も抜けて食べやすくなります。厚切りにして米のとぎ汁で茹で、他の材料と煮込むと、煮汁をたっぷり吸い込んでいる大根は、胃腸虚弱の人に最適な蔬菜となり、ふろふき大根、おでん、ブリや豚肉との相性の良さは誰からも好まれます。お正月明けに食べる春の七草粥のスズシロは大根のこと。冬の夜長にお膳を囲んで、ゆっくり味わうと、どれほど心休まる食卓になりましょう。


民間療法

新鮮な大根下ろしは、吐き気、頭痛・鼻血のときに鼻孔につける。焼き魚等の薬味に。消化不良に。咳止め、痰切り、咽頭痛、二日酔いには、厚切りか短冊切りを水飴かハチミツに1晩漬けて(ショウガ汁を滴下してもよい)汁を服用します。打ち身、ねんざの冷湿布に下ろし汁を使います。干し葉は、冷え症、神経痛の浴湯料にしましょう。種子は健胃、下痢、痰切り、咳止めとして煎じるか、粉末を飲むことが漢方や民間で行われてきました。
当たり芸のない役者を『大根役者』と申しますが、「大根はいくら食べても食当たりしない。」ことにかけた言葉で、ダイコンの消化の良さや縁の下の力持ちを表現しているのかもしれません。



参照:
「台所漢方あれこれ」「世界有用植物事典」「化学大辞典」
「原色牧野和漢薬草大図鑑」「新編日本食品事典」「中葯大辞典」
「食品のおいしさの科学」「食品成分表」「毎日ライフ」


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